2019年10月18日金曜日

教室から:マンガのセリフによる自己理解ワークショップ

横浜国立大学教育学部では、1年秋学期から、領域別の学習がスタートします。
1年生にとってはじめての領域別授業となるのが、フィールドワーク科目「教育実地研究」。
「教育実地研究」では、領域ごとに、学校現場のフィールドワークを行い、現場での観察や体験と振り返りを通じて、教職について考えていくことをねらいとしています。

今年度の「教育実地研究」では、秋学期を通じて行われるフィールドワークの前に、プレワークショップとして、「自分が、今、大切に思っていることは何か」「自分がこれから、大切にしていきたいと思っていることは何か」など、自分にとってのコアとなる信念や価値観について振りかえるワークショップを実施しました。

そんな自己理解のためのワークショップを企画してくれたのは、「マンガを使ったキャリア支援」をテーマに卒業論文のための研究を進めている4年生。
今回、彼が、教育学部の1年生を対象に考えてくれたのは、「マンガのセリフ」を使って、自分の信念や価値観について振り返るワークショップでした。


川島裕子(編)『〈教師〉になる劇場―演劇的手法による学びとコミュニケーションのデザイン』(フィルムアート社)で紹介されていた、「教育格言」のアクティビティをベースに考えられた、「自分の心にささるマンガのセリフ」を探し、それについて語るワークショップ。

実践の前には、1年生たち自身と4年生から「自分の心にささったマンガのセリフ」が募集され、計31個のマンガのセリフが集まりました。

1年生から集まったセリフの一部を紹介すると、こんな感じです。

この世で全てを犠牲にする価値のあるものが"家族"以外に存在すると思うか?(『文豪ストレイドッグス』)

世界は平凡か?未来は退屈か?現実は適当か?安心しろ、それでも生きることは劇的だ!(『メダカボックス』)

一位と最下位との差なんて大したことねーんだよ  ゴールすることとしないことの差に比べりゃ(『宇宙兄弟』)

あいつは憎んで覇者となるよりも、愛して滅びる道を選んだんです(『BANANAFISH』)

いちばんいけないのはじぶんなんかだめだと思い込むことだよ。(『ドラえもん』)

一緒に強くなろう! 僕らはチームメイトなんだから!(『送球ボーイズ』)

人間は転んでも何度だって立ち上がれる(『ハチミツとクローバー 』)

未来の私達が描く幸せはきっと私達の「今」なんだろう(『orange 』)

「「疑わないこと」それが「強さ」だ」(『ONE  PIECE』)

こんなかんじで集まった31個のセリフ(『ドラえもん』率が若干高め)を、A4判の用紙に拡大コピーして教室中にはり、教室をぐるぐる歩きまわりながら、「自分の心にささるセリフ」を探していってもらいました。


その後、ペアワークで、そのセリフを選んだ理由や、そのセリフから思い出す自分自身にとっての過去のエピソードなどについて語ってもらい、ペアで話したことをもとに、ワークシートに自分自身がペアワークで語ってきたことをまとめて記入。
その後、自分自身がこれから大切にしたいことを、言語化して記入してもらい、また違う相手とペアになって、自分が書いたストーリーを「モノローグ」で語ってもらいました。

「モノローグ」で語ったあと、語りを聞いた相手から、「モノローグを聞いてみて、語り手がどのような人であると思ったのか」を話してもらい、最後には7人ずつのグループで、聞き手からのフィードバックを受けて、自分自身の「モノローグ」と自分自身について気づいたことを共有してもらう…という流れです。

「教育実地研究」では、次回からついに、学校でのフィールドワークが始まります。
1年生たちには、あらためて、自分自身について考えたことをもとに、教育にかかわること、教師として働くこと、学校とかかわることについて考えたうえで、自分なりのフィールドワークの視点を考え、実際のフィールドワークに臨んでもらえるといいなぁ、と思っています。

2019年10月1日火曜日

図書館とゲーム部・連続ミニトーク「本とゲームの幸せな関係!?」@図書館総合展

 2019年11月12日(火曜日)から14日(木曜日)に、パシフィコ横浜で開催される「図書館総合展」。
その初日(11月12日)に、「図書館とゲーム部」ブース内で開催される連続ミニトークにて、高芝麻子先生(漢文学)がご登壇されることになりました。



連続ミニトークのお知らせをいただきましたので、情報を掲載いたします。

図書館とゲーム部・連続ミニトーク
「本とゲームの幸せな関係!?」
  • 日時:2019年11月12日(火曜日)15:00-17:00
  • 会場:パシフィコ横浜・図書館総合展会場内「図書館とゲーム部」ブース
全国の図書館において、ボードゲームを中心とした「ゲーム」のイベントが開催されていることに象徴されるように、昨今、本や読書とゲームとの関係はより多角的な要素を呈してきています。これまでは単に、「本の世界の入口」「読書への導入」として捉えられていたゲームを、新たな角度からとらえなおす時期が来ているのではないでしょうか。特に、プロからアマチュアまで様々な主体による表現の場となりつつある、インディーズゲームの世界では、不特定多数のマス集団としての「消費者」に向けたゲームとは異なる表現の可能性や,既存の社会・文化とのかかわりを実現してきているように思います。世界的な注目を集めたSarepta Studioによる『マイチャイルド:レーベンスボルン』は、まさに、「育成ゲーム」というシステムを通じて、世界各地の人々と「レーベンスボルン」をめぐる歴史との新たな関係性を構築したといえます 
本連続ミニトークでは,「ゲームソムリエ」として図書館とゲームとをつなぐための実践を数多く行ってきた「格闘系司書」(@librarian3)こと高倉暁大と,メディア教育・読書教育研究者の立場から,子ども・若者たちによって育まれてきたカルチャーの教育・学習的な可能性を探求してきた石田喜美(横浜国立大学)が「聞き手」となり,ゲームデザイナーや研究者の方にお話しをうかがうことによって、インディーズゲームが切り開いてきた、本や読書とゲームとの関係を探ります。
  
「読書(本)の魅力とゲームデザイン~『ALTER EGO』にみる本とゲームの幸せな関係!?~」(ゲスト:大野真樹(株式会社カラメルカラム))
       
  テーマ1:『ALTER EGO』のゲームデザインにおける文学の位置】
  -ALTER EGO』発想の経緯 
  - ALTER EGO』における参考文献(文学作品)の選ばれ方
  - メタ文学としての『ALTER EGO』
   
  テーマ2:『ALTER EGO』のゲームデザインと「心理学」
  -    心理テストの選ばれ方・参考文献(心理学)の選ばれ方 
  - エンタメ学問としての「心理学」と事故の探究
  - 自己を探究するための「哲学的ツール」としてのゲーム



「漢詩(漢文学)入門としてのゲーム~『Lyrica~陽春白雪』で迫る漢詩の魅力~」ゲスト:高芝麻子(横浜国立大学 准教授 漢文学研究)
      
  テーマ1:『Lyrica』に見る漢詩・漢文の魅力
-「陽春白雪」という言葉の意味
-「清平調」と李白とその時代
             -「李白」像をたどって
      テーマ2:『Lyrica』の漢詩から図書館へ
- 『Lyrica』に出てくる漢詩の元ネタの調べ方
- 漢詩に興味をもった中高生・一般の人々への読書案内