教育学部1年生対象のフィールドワーク科目「教育実地研究」では、各領域にわかれて、学校や授業の観察を行ったり、演習や実習を通して、現在の学校や教室がかかえるさまざまな課題について考える活動を行っています。
先日は、「読むこと」「書くこと」について困難を抱える子どもの実態について知り、考える授業を実施しました。
はじめに、NHKハートネットTV「“書けない”ボクと母が歩んだ道 ~学習障害と共に~」を視聴したのち、横浜市の「読書バリアフリー」政策を担当されている、横浜市教育委員会・生涯学習文化財課の方にゲストとしてきていただき、『読書バリアフリー啓発リーフレット』(PDF)や、「読書バリアフリー啓発動画」などをもとに、横浜市での「読書バリアフリー」の試みについてお話しいただきました。
「音声デイジー」の紹介や、「マルチメディアデイジー」のご紹介をいただいたのち、
マルチメディアデイジー教科書のサンプルを体験してみたりしました。
その後、ゲストの方にお持ちいただいた「バリアフリー図書」――大活字本、LLブック、点字絵本、さわって楽しむ絵本(布絵本、点字つきさわる絵本)――を、みんなで実際に「読んで」みながら、学校や教室において、どのように「読むこと」にインクルーシブな環境を作っていけるだろうか、ということを、考えていきました。
授業の最後に行われたディスカッションでは、“活字で印刷された図書を読むことだけが「読書」ではなく、「読書」にはさまざまなかたちがありえる」ということを皆が感じられるとよいのではないか”という意見が出る一方で、“いろいろな「読書」がある一方で、だからこその「紙の本」だからの良さというのも考えていきたい”という意見も出たりしました。
授業後には、“(最初に視聴した動画のような)「書くこと」の障害がある場合、入試などでできる対応があると思うが、「読むこと」の困難の場合、現在はまだ対応が難しいのではないか”というような問いを投げかけてくれる学生もいて、あらためて、今回の授業での試みがたくさんの問いを学生たちに残してくれたことを実感しました。
「読むこと」「書くこと」の力を育てようとする国語科教育の立場から、「読書バリアフリー」の提起する問いをどのようにとらえていくべきか、という点については、まだまだ考えるべきことがあると思います。
今後も、学生たちや実践家の人たちとともに、このことについて考えていきたいです。