2024年12月24日火曜日

教室から:国立国会図書館(東京本館)&大宅壮一文庫ツアーを行いました

国立国会図書館「個人向けデジタル資料送信サービス」の衝撃

 2022(令和4)年5月に、国立国会図書館「個人向けデジタル化資料送信サービス」が開始し、文献調査法の世界が大きく変わりました。

その影響は、国語(科)教育研究においてもとても大きなものであったと実感しています。

これまで、関心ある国語(科)教育の実践例を調べようと思ったら、『国語教育総合事典』(日本国語教育学会編)の「第Ⅲ部資料編」に掲載されている「『月刊国語教育研究』特集関連総目次」を見ながら過去の実践例を探すしかありませんでした。さらにいえば、そうやって調べられる目次も、2011年11月号(10年以上前!)までで、2011年12月号以降は、図書室にこもって過去のバックナンバーを手当たり次第に見てみるしかない状況でした。

それがいまや、「国立国会図書館デジタルコレクション」でパパッと2016年12月号まで、インターネット上で調べられるような状況。

月刊国語教育研究【全号まとめ】-国立国会図書館デジタルコレクション

目次だけであれば、国立国会図書館の利用者登録をせずとも、だれでも調べることができます。さらに、利用者登録をすれば大学でも家でもどこでも、本文を閲覧できてしまうわけです。これはまさに「革命」的事件だと思っています。

そのような話をしながら「利用者登録不可避!」と何度も繰り返していたところ、学部生から「それなら、国立国会図書館の利用者登録をしたい」「せっかくだから、みんなで国立国会図書館に行って、どのように利用するのか体験してみたい」という声があがりました。

また、今年度担当している学部生たちのなかには、「怪談」「都市伝説」や「ミステリー」などの大衆文化や、地域・社会と学校(教育)との関係など、社会史・文化史的なアプローチで調査をしていくことで、研究の切り口が見出せそうな人たちも多かったため、「ぜひ大宅壮一文庫の存在も知ってほしい!」と思い、午前に国立国会図書館に行き、午後に大宅壮一文庫をめぐるツアーを企画・実施しました。


事前学習

今回の授業では、1週間前の授業で各自、それぞれの図書館の利用方法について事前学習をしてもらうことにしました。

国立国会図書館の事前学習

学部生たちにとってはどうしても「図書館」といえば「開架式」の図書館をイメージしますし、すでに国立国会図書館利用経験のある学部生・院生たちに聞いてみると、国立国会図書館館内の厳格な雰囲気と、入館に必要なさまざまな手続きに、ぎょっとすることも多いようだったので、「国立国会図書館」HP内の「入館」に関する案内ページと、「国立国会図書館東京本館への入館方法」の映像を事前に見てもらうことにしました。


また今回は国立国会図書館に滞在できる時間が少なく、また、午後に大宅壮一文庫に行くことも決定していたので、国立国会図書館内で利用できるデータベースも紹介し(「国立国会図書館内で使用できる主なデータベース」)しておきました。

大宅壮一文庫の事前学習

大宅壮一文庫については、事前に、文庫の職員の方と連絡をとれていたこともあり、「大宅壮一文庫」のリーフレットを全員に配布することができました。
また、横浜国立大学では残念ながら「WEB Oya-bunko」を利用できないので、当日、国立国会図書館か大宅壮一文庫で「WEB Oya-bunko」を利用してもらうことを想定し、大宅式「件名項目体系」を事前に見てもらいました。


また、大宅壮一文庫では、職員の方によるバックヤードツアーや説明も行っていただく予定だったので、学生たちには、大宅壮一文庫やWEB Oya-bunkoについての質問を考えておいてもらい、それを事前に先方と共有しておくことにしました。

国立国会図書館へ

当日は、午前9時30分に、国立国会図書館の入口に集合。
はじめに全員で新館に行き、利用者登録をおこなったのち、本館入口から入ってロッカーへ。

「リユースバック」という謎の存在、そして、ロッカーに自分の持ちもののほとんどを預けなければいけないというルールに衝撃を受け、なぜか発行してもらったばかりの入館証をロッカーに預けてしまったり、パスワードが記された用紙をロッカーに入れたバッグに入れっぱなしにしたりしたり…といろいろありながら、なんとか、全員入館!

そこまで頑張って入館したものの、スケジュール上、1時間くらいしか滞在できないので、午後の調査に向けて「WEB Oya-bunko」を見てもらったり、新聞データベースを見てもらったりする時間に。
ただ、実際見てみると、学生たちは、すでに発見していたお目当ての資料を探しに行ったり「NDLサーチ」でいろいろ検索したりしてみているようでした。

大宅壮一文庫へ

午前11時過ぎ頃、一旦解散し、「午後1時に大宅壮一文庫に集合」と約束して、一旦解散。
午後1時10分頃、学部生たちが大宅壮一文庫に到着しました。

大宅壮一文庫と専門図書館

はじめに、大宅壮一文庫内にある「書斎」(大宅壮一氏の書斎を再現した部屋)にて、大宅壮一文庫について、そして「大宅壮一文庫」をはじめとした専門図書館についてご説明をいただきました。
偶然なことに、ちょうどう訪問を行った当日に「あなたも使える専門図書館」の図書館総合点展でのトークイベント動画(アーカイブ動画)が公開されたとのこと。年末年始に見てみたいと思います。


バックヤードツアー

その後は、大宅壮一文庫のバックヤードへ!
大宅壮一文庫は、複数号の雑誌をまとめて製本する、いわゆる「製本雑誌」「合本製本」を創っておらず、雑誌がそのままの状態で書架で保管されています。
大学図書館や県立図書館などで、製本雑誌を見る機会は数多くあれど、これだけの量の雑誌が、そのままの状態で書架に並んでいる状態を見る機会は、ほとんどありません。
そのため、すでに背表紙が崩れてしまっているような状況のものもあり、そういうものも含めて、なんとも言葉に言い表せない、圧倒的なオーラを感じます。


1960年代後半に発刊された『平凡パンチ女性版(平凡パンチ臨時増刊)』(『an・an』の前身)の表紙に複数印刷されている「女性版」「女性版「女性版」に時代の空気を感じたり、『ジュニアそれいゆ』のすてきなデザインに心ときめいたりする、大宅壮一文庫のバックヤードツアー。
なぜか学生たちが『文藝春秋』のバックナンバーを見るのに夢中になっていたのが印象的でした。

その後は、質疑応答の時間をはさんで、いよいよ、雑誌の節欄。
学生たちそれぞれに、事前に調査してきた内容にもとづき(あるいはその場で「WEB Oya-bunko」の検索を行ったうえで)雑誌の閲覧申込を行い、それぞれに、関心ある雑誌記事を見てみたり、そこに書かれている記事内容をメモをしたりしていたようでした。

ふだん使っている、大学図書館や、地域の公立図書館とは異なる図書館(国立国会図書館、専門図書館)を知ることで、「文献で調べられること」の広い世界に気づく…そんな機会を創れればと思って企画・実施した国立国会図書館&大宅壮一文庫ツアー。

学生たちに、いろいろな図書館を知ってもらうことで、文献の広い世界、多様な世界に気づき、そこから卒業論文に向けてのアイデアを着想するような…そんな機会を、もっともっとつくっていきたい、とあらためて思いました。

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