2022年6月3日金曜日

教室から:「高校1年生までに読み手・書き手として親しんでおいてほしいジャンル」

横浜国立大学教育学部2年生の必修授業「初等教科教育法(国語)」では、「読書指導」についても学びます。

今回の「読書指導」の授業では、はじめに、次のような問いについて考えてもらいました。

「あなたは高校教員。新しく受け持つ高校1年生が、読み手や書き手として親しんでおかなければならないと考えるジャンルは何ですか?」

この問いは、エリン・オリヴァー・キーン(2014)『理解するってどういうこと?:「わかる」ための方法と「わかる」ことで得られる宝物(新曜社)のなかで、著者が、高校1年生を担任している先生方に向けて発したことのあるものとして紹介されている問いを参考にしています。
学部生たちは、実際にクラスを担当していることがあるわけではないので、あくまで、高校教員になったつもりで、中学を卒業し高校に入学するまでにどんなジャンルに親しんでおいてもらいたいか、を考えてもらいました。

2クラス計60~70名くらいの学生たちが考えた答えは、次のとおり。
もちろん、まったく回答していない学生たちもいます。



「文学的文章」「説明的文章」…のように、『学習指導要領』に出てきている文言を並べることしかできない学生もいれば、「人間関係を題材にした本」「世界のことがわかるノンフィクション」のように、自分なりに、高校1年生に読んでおいてほしい本のことを考えながら書いてくれる学生たちもいます。

『学習指導要領』の文言を並べることしかできない学生たちは、教科教育法の授業で問われたときの「無難」な回答として、これを書いているのかもしれない、と思うと少し悲しい気持ちになりますが、一方で、自分なりに考えて回答してくれる学生たちもいるのは、とてもうれしい。

そして、自分なりに考えてくれた学生たちの回答からは、いろいろなことを考えさせられます。

今回、わたしが考えさせられたもののひとつは、「週刊少年ジャンプ」



率直な感想として、(「週刊少年ジャンプ」が「ジャンル」かどうか、という問いはおいておくとして)「なるほど。たしかになー」と、すごく納得しました。

事実、日本のなかで、これから高校生活をはじめて、友達を作っていこうとうい段階になって、『週刊少年ジャンプ』の作品になじんでいて、友達から「あれ、見た!?」と言われたときに、「見た、見た!あれさ~…」と語ることのできるリテラシーは、学校生活を送っていくうえで、必要不可欠な感じがします。

あとは、意外に多くてびっくりしたのが、自己啓発本ビジネス書



わたしの周りだと、まだまだ、自己啓発本やビジネス書に対する偏見も根強いので、逆に、「高校1年生までに親しんでおいてほしいジャンル」として、学部生たちが挙げるジャンルのなかに入ってくることには、びっくりします。

クラスごとの違いもあって、面白かったので、秋学期も同じ試みを続けてみようかな、と思っています。