2020年度がはじまりました。
新型コロナウイルスの影響で、不安な日々が続いております。
横浜国立大学も、授業開始が5月7日に延長され、新たな学事日程が配布されました。
4月4日から5月6日までは、大学構内への学生の入構も、原則禁止ということで、とても静かな新年度を迎えています。
学生の皆さんにおかれましては、このようなときだからこそ、ふだんは見ないような書籍や論文を見てほしいと思います。
3月末に発刊された、本研究会の研究開誌『横浜国大国語教育研究』第45号を見てみてほしいのはもちろんですが、もうひとつ、おすすめしたいのは、3月中旬に発刊された『古典教育デザイン』第4号。
昨年2月に開催された、本学名誉教授・三宅晶子先生の退職記念シンポジウムでの鼎談「これからの古典教育」や、そのときにご講演くださった鈴木彰教授(立教大学)による特別講演「二度目からの『平家物語』―いくさなき世の教材として」を読むことができます。
『横浜国大国語教育研究』第45号では、新型コロナウイルスの感染による、学校や教育への影響について、次のような「巻頭言」が掲載されています。
外出自粛が求められる今の時期だからこそできることを、この状況をポジティブに捉えながら、実践していきたいと思います。
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レジリエントな学習社会をつくる/石田喜美(横浜国立大学)
「平成」から「令和」へと元号が変わって最初の年度となる西暦二〇一九年度(平成三一年度/令和元年度)は、日本社会にとって、未来に向けたチャレンジが多く求められた年度であったように思う。今年四月から、小学校ではついに新学習指導要領が全面実施されるのに伴い、今年度は、学校教育が新たな時代を迎えるための最後の準備期間として、官民ともに様々な動きが生じていた。一方、令和元年十月に生じた千葉県内の豪雨災害、そして昨今、急速に世界に広がっている新型コロナウイルスの感染とそれに対する政治的対応は、あらためて、私たちに、「学校の役割とは何か」「学ぶとは何か」といった問題を突き付けてきている。
現在、私たちが直面している挑戦的な課題のひとつは、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための臨時休校措置によってもたらされた。文部科学省からの依頼に応じて、多くの自治体が、三月二日から小中学校を臨時休校とすることになったわけだが、この臨時休校は、私たちに、「学校外での学習」とそれに対して学校ができることを再考する機会をもたらした。残念なことに、二月二八日に文部科学省から各教育委員会等に示された文章では、「ブレンド型学習(blended learning)」など、アクティブ・ラーニング時代におけるICT活用などの議論をほとんど踏まえておらず、むしろ、教科書を中心とした一斉指導を前提とし、学校外での学習をそれに対する補習(復習)位置付けているように思われた。他方、この臨時休校依頼を受けて、多数のEdTech企業が休校中の児童生徒を支援するための取り組みを決定し、三月二日には、それらの情報をまとめたポータルサイト「#学びを止めない未来の教室」(経済産業省)などが公開された。
これらの動きとそれを用いた学校外での学習活動は、新学習指導要領が全面実施される四月以降、学校におけるICT活用を後押しし、新たな「学び」の姿を実現する大きなパワーになる可能性を秘めている。またこのような状況の中、社会全体が、学校のみに依存しない学習の在り方を想像するようになっていることの意義も大きい。予測不可能な時代はまだまだ始まったばかりだ。だからこそ、これまであった学校や学習の「当たり前」を見直し、なにがあってもしなやかに生き延びうるレジリエントな学習社会の実現に向けて、想像力を駆使していく必要がある。まさに今が、その時なのだ。
(いしだ・きみ/横浜国立大学)
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